「腐る経済」の生みの親・渡邉格(いたる)さん。パン屋の主人である。
今は、新天地での開業にむけてパン屋さんは、ひと休み。ビール、コーヒーも商いに加えるそうだ。
「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」は、ベストセラーとなっている。とはいえ、この本は、ひとことで説明するのが難しい。なぜなら、いくつもの要素が折り重なりあい、盛りだくさんのとても欲張りな本だ。
「ひとことで語れない本」をあえて大づかみにとらえ、3つの側面から、この本の面白さを伝える。
1つ目は著者の成長物語。2つ目はパンのつくり手だからこそ語れるパンや「発酵」の話。そして3つ目がタイトルにもあるパン屋ならではの「経済」の話である。
加えて、「人口減少の働き方」にも”参入”してきた。時代の寵児ともなると、労働の参考にもなる。スタジオジブリの『熱風』2014年4月号の特集「人口減少社会2」で、寄せている。
現下、人口が減る一方、慢性的な失業に苦しむ「ひと余り」状態。そういう時代に「労働効率のみを追い求めるより、十分に人手をかけて技を磨き、環境負荷を減らす働き方が、新たな価値を持つ」と持論を披瀝する。
「正しく高く」仕入、手間暇かけてパンをつくる。そのすべての労働と、家賃や減価償却など諸経費を「正しく」価格に反映、パンを食べるひとに届けている。コストを正しく積算する。平均単価400円。
なによりも「菌」の場づくりに手間をかけているそうだ。「天然菌」で発酵させている。
手間をかければいいわけではない。過疎のまちで四六時中あけるのは、非効率。週3日は店を閉める。
「人口が減っても、人手をかけた豊かな『商品』がそこかしこに溢れれば、楽しく心地よい場所になる」と、主人は確信する。
里山資本主義の切り札になってもらいたい。