むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

 「ビックデータの罠」読了。 サービス=個人情報。

 にわかに耳目がそそがれるビックデータ。田舎町の役場職員ですら「行政の効率化が失われ、まちが魅力を失えば、人口はへり、過疎化がすすみ、さらに効率がわるくなる。負の連鎖を断ち切るには、科学的データにもとずき、経験とカンだけにたよりがちだった行政の政策立案の壁を打ち破るしかない」と、シンクタンクの研究員がいうことを、さらりといってのけるようになった。

 『ビックデータの罠』の著者・岡嶋裕史さんは、

 「アプリなどをダウンロードする際、ユーザーは説明文を熟読せずに、『便利だから』『タダだから』などという理由で気軽に『同意』をクリックしている現状ですが」

 とのインタビューに対して、

 「無料のものを甘く見ない方がいいでしょう。サービスの対価としてお金を払わない場合でも、ビジネスですから『何か』は差し出しているわけです。サービスと交換されているものは、個人情報であることを肝に銘じておくべきです。

 数千万円でマンションを購入する際の重要事項説明は、どんなに退屈でも読みますよね。でも、無料のアプリなどの利用規約は、熟読する人はほとんどいません。

 しかし、規約は利用者とサービス提供者間の契約であることは間違いありません。利用規約にはその事業者の姿勢が表れます。

 煙に巻くような利用規約を書く企業は、きっと顧客を煙に巻きたいのだろうし、わかりやすい利用規約を提示する企業は、顧客にも真摯だと思われます。私たちは、個人情報をぞんざいに扱う企業は、信用に値するかどうかを再考すべきです」

 と答えている。
 
 ヤフーが国政選挙の際、検索数と得票数の相関からプロ顔負けの予測結果を公表したり、東日本大震災時、避難する車のカーナビのデータから、渋滞がいかに起こったか、また、起こらなかったかが分かるようになったことーーを挙げている。
 
 選択の自由が奪われて、個人に関わる情報が「機械という名の神」に筒抜けになるような状況は不健全な社会だと警告している。

 思考を他者に預けず、自身の感性を信じて生きることこそ、成熟社会を生きる目盛りだ。