兵庫県海上集落に聞き書きに行ったので、足をのばして香住町まで出向いてきた。
応挙の絵を観るためだ。香住町には「応挙寺」として親しまれている大乗寺がある。
写生派の祖とよばれる江戸時代の絵師、円山応挙(1733~95)と12人の弟子が、客殿の襖(ふすま)165面に絵を描いたからだ。
襖絵はすべて重要文化財に指定され、収蔵庫に。寺に飾られているのは、精巧なレプリカである。
「孔雀の間」「郭子儀の間」「山水の間」は、数々のレトリックに満ちて、見ていてあきない。
例えば、仏間に通じている「孔雀の間」。仏壇の前の襖を開けても閉めても、松の図柄が左右の襖とつながるように計算して描かれている。
「郭子儀の間」といえば、鑑賞者が居場所を変えても、郭子儀の視線が自分の方向をむいているように見える。
この画家に描けぬものなしといわれた応挙だけに、かわいさ満開、怒涛のリアリズム、華やぎと遊びーー写実が堪能できる。