むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

和紙の声がきこえる 吉永裕

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 一枚の新聞の切り抜きを、大切にして額装している。

 2000年11月12日、読売新聞。「絵は風景」。芥川喜好さんの筆である。

 「和紙の声が聞こえる」

スエードのような、柔らかな毛羽立ち。
深いブルーに染まる、そのひと続きの諧調。

 和紙である。

繊維が立ちあがり、声を発している。

 色はパステル。指摘されないとわからない。

 和紙にパステルをコラボ。その結びつきに驚嘆する。

畳こまれた和紙にパステルが擦りこまれ、和紙は傷つき、ささくれ、よじれ、なおも抵抗しつつ色を受け入れ、ついに色が和紙に、和紙が色になり遂げる。
その無残な戦いから生まれるものの美しさに驚く。


 畳んだ和紙のひとマスごとにパステルを擦りこんで繊維を恐しながら、順に埋めていく。最後に一枚に広げた結果が、この縦横に折り線を浮き立たせた風景となる。