むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

緊張感のある「街道をゆく」 砂鉄のみち204号

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 司馬遼太郎さんの「街道をゆく」は、ルポの”教科書”である。

 204回の砂鉄のみちは、すごみがあって緊張感も伝わってくる。

 「きょうは作州(美作)の加茂ー岡山県苫田郡加茂町ーへゆかねばならない。」

 「その加茂盆地へゆかねばならない」

 2回も、繰り返し書いている。何かを探りあてるようだ。タタラにも興味をしめしている。

 「午前十一時すぎ、加茂に入った。」

 町役場で『かもだに(加茂谷)のことば』という方言を採録した小冊子をもらっている。町民の加茂谷文化に対する誇りをほめている。
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 一転、タタラ遺跡が多いことから方言集に、「鉄や金属関係の特別な方言が収録されているかと思って繰ってみると、存外なかった。」と手厳しい。

 説明を聞くうちに、砂鉄業者の後継の無さに驚く。

 「製鉄という古代以来の産業家というのは、持続という点では壮烈なほどに持続しないものなのではないか。」

 ぐいぐいと、聴き入る。

 博学と前もっての知識からくる”司馬観”だろう。

 古墳からの出土品から、砂鉄豪族を推察する。

 遺跡は残っているにもかかわらず、口碑伝説を伝えていないことの口惜しさを記している。

 もっと、聞き書きをして、残しなさいーーとでも指摘している。

 言うことは、きちんと書いている。