『21世紀の資本』と、『日本改造法案大綱』。
ピケティセンセイと北一輝。
時代、国も違う2人だが、格差を問題視する点は符合する。北は1936年に起きた二・二六事件の理論的指導者と見なされ、反乱罪に問われた。その魔力に引き寄せられるように東京帝大時代の岸信介元首相や、今年が生誕90年になる作家・三島由紀夫も影響を受けたとされている。
ピケティセンセイは44歳、北が『法案』を改造社から出版したのが40歳だ。
『日本改造法案大綱』は、独自の憲法草案のようなかたちをとっている。当時の農村の困窮や貧富の差を改めるべく「国民の総代表」である天皇の下で国家社会主義を目指す内容だ。意外なことに趣旨の多くは現憲法に反映されている。
北は、財産や土地などの所有に上限を設け「超過分は国家に納付する」とした。私産限度は「一家族で100万円」。今の貨幣価値にすると40億~100億円になる。限度以上の私産は、無償で国家に収納される。
ピケティセンセイの分析では、資本の収益率は経済成長率を上回り、相続などで大きな富を持つ人は、懸命に働く人よりお金が増えて格差は広がる。そこで実現は難しいが、すべての富に課す国際的な累進資本税を提案する。
富と格差が世襲され、拡大してしまう21世紀。「学者でももちろんない」(妻スズ)北の先見性、卓見はピケティセンセイとそん色ない。