むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

NPOでムラづくりは、不向き

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 2001年に集落全戸が参加して丸ごとNPO法人化をした鳥取県智頭町の新田集落。

 NPO法人新田むらづくり運営委員会。

 全国でもっとも早い地域づくりNPO法人だろう。

 人口50人を切り、最高齢は99歳が2人もいるような高齢化集落。智頭町中心部からも10キロ以上離れた山奥にある。65歳以上が6割を越し、その数値からすれば、まさに限界集落だ。

 だが、すごい。

 都市と田舎の交流事業では、年間4000~5000人が訪れるし、人形浄瑠璃を上演するし、毎月カルチャー講座を開く。その講師には、国会議員から有名な文化人、研究者など一流の人を招く。

 しかしながら、

 「NPO法人は、地域づくりに向いていません」

 それは税制の問題が関わっている。地域づくりをするためには資金が必要だから収益事業を行うのが通常だが、この収益にはきっちりと税金がかかり支払わなくてはいけない。その点は、株式会社などと同じだ。

 一方で、地域づくりのためには非営利のお金にならない事業も行うことが少なくない。この新田集落の場合なら、カルチャー講座などもその一つだ。当然、赤字。

 こうした場合、株式会社などなら、収益事業で上げた利益を儲からない事業の補てんに回すのが通例だ。そうしたら払う税金がコストを引いた分だけ安くなるだろう。これを利用して、常に投資を続けて赤字決算して税金を払わない企業も少なくない。

 ところが、NPO法人には、それが認められていない。収益事業と非収益事業はしっかり分けて、利益の出た事業にはしっかり税金をかける。だが儲からないところに資金を融通することは経理上できないことになっている。

「税金ばかり取られます。不採算部門は切り捨てるしかなくなる。ボランティアでしろというのなら、地域づくりはできない」

 いっそのこと、株式会社にしておけばよかった、とのことである。

 もちろんNPOの方が、世間的には共感を呼びやすいとか特典もあるだろうが、経営のことを考えるとそんなに甘くない。事業即地域づくりという形態の方がよさそうだ。

 なお株式会社にも、第3セクターという形もある。行政と民間双方が出資する形だ。これは、行政の信用と、民間の経営ノウハウを併せ持つ会社ということで期待された。