むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

自信と他信

 われは石なり

 道に落ちたる石他

 人、手にとれば玉となり

 人、手にとらざればただの石にすぎず

 われは石になりゐてうれしかりけり

 人のひろひて玉といふまで

 中川一政の25歳のときの作品だ。

 「自負」。

 中川には画の先生はいない。

 唯、たよりににしていたのは、手ごたえだけであった。手ごたえがなければ、画はダメになる。

 手ごたえによって自信ができる。

 まわりからほめられていい気になっているのは、自信ではない。他信だ。

 自信と他信は、似て非なるものだ。

 芸を売りものにしている人は、孤独なものだ。

 ほめられても、けなされても、孤独だ。