むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

高校野球って、ホンとにいいですね。朝日新聞の小俣記者の記事に、ほろっときた

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 かつては、運動部の記者だった。団体球技の熱戦には、いまだに涙腺がゆるむ。高校野球はいい。朝日新聞・小俣勇貴記者の記事には人情が出てて、楽しい。

 秋季近畿地区大会決勝の天理12―4大阪桐蔭戦の記事には、ほろっときた。

 「決勝で敗れ、相手の場内インタビューが終わった後だった。大阪桐蔭の主将、薮井駿之裕(2年)は相手ベンチに向かって駆けだした。天理の中村良二監督のもとへ行くと、少しだけ言葉を交わして頭を下げた。中村監督は「ありがとうな」と応えた。薮井は仲間のもとへ戻っていった。」

 見事な書き出し。なにが起きるか、期待させる。

 「敗れたチームの選手が相手の監督に話しかける。それも、表彰式の直前に。あまり見られない光景だ。薮井がその理由を教えてくれた。「どうしてもお礼が言いたくて。お世話になった少年野球のチームが中村監督に助けてもらったことがあるんです」。

 常日頃、選手の呼吸を聞いて取材している間柄なんだろう。詳しく書く。

 「大阪桐蔭に入学する前の出来事だった。大阪にある少年野球チーム「藤井寺リトルシニア」の練習場が大雨の影響で浸水し、練習道具一式が使えなくなった。そこにボールを支援したのが、天理の中村監督だった。中学で所属していたチームの監督が天理出身だった縁もあり、薮井もボール運びを手伝った。

 ただ、薮井は藤井寺リトルシニアとは違うチームの出身。自主練習をするために練習場を借りたことはあったが、直接的な被害を受けたわけではない。さらにこの日は、敗れた直後で気持ちも落ち込んでいたはずなのに――。

 「もちろん一番は、チームが負けて悔しいですけど……」と薮井。でも、「野球をやっている以上、野球でつながっている以上、助けたり、助けられたりするもの。助けてもらったと思っていたので、ずっとお礼が言いたかった

 背番号14の薮井は、この試合に出場することはなかった。それでも全国屈指の強豪校で主将を任されている理由が、その行動からも伝わってきた。

 締めくくりである。見事である。