むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

徳を積むつきあい

 歩く。昼すぎ、川のほとりでぼんやりしていた。むこうから、むらの風流人のおじいさんが話しかけてきた。

 「寒いなあ。歩きか?これ一本もっていけ」と、大根を一本くれた。「陽気がようなったら、取りに来いな」
とつげ、自転車をこいでいった。

 このとろこの農家は、作るだけ作って、腐らすのが栽培のパターン。物々交換がなくなった。

 「むらもせちがなくなったけなあ」と、おじいさんはいつも、ぼやく。「徳を積むってよく言うだろう」と。利害関係や損得勘定を抜きで、人に親切にすること。「お礼を期待して恩着せがましくなるのは、運気を落とすことになる」と、話してくれる。