皐月の野山は、紫の花が咲き誇る。
野を歩けばスミレ草、山では木々の合間にフジやキリ。湿地や庭園はショウブとカキツバタ。
日本古来の色の名は、花からついたものが多い。
「菫(すみれ)色」「藤色」「藤紫」「杜若(かきつばた)色」「菖蒲(しょうぶ)色」「菖蒲(あやめ)色」。
尾形光琳が「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」に描いたカキツバタの紫が代表だ。
かきつばたの花が燕(つばめ)に似るため「燕子花」であり、呼び名の方は花の汁を布にこすり付けて染料にした古代の技法から、「書付花(かきつばた)」が転じた。
芭蕉は詠んだ。
くたびれて宿借るころや藤の花