むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

田中古代子の愛娘の名は、藤村の「草枕」から名付けたのでは?

一年に数回、ぼくがだした本のことで、遠方から問い合わせがある。関心をもってくれるひとがいるんだ。大正期に大阪朝日新聞懸賞小説で入選し、将来を嘱望された女流作家のことである。 田中古代子(1897-1935)で、非命にたおれた38年だった。た…

忖度ありきの会話から、真剣な言葉が紡ぎ出せるか?

「悪口は、言わない、聞かない、関わらない」「『嫌われない話し方』は、『好かれる話し方』以上に重要」との提言からわかるのは、とにかく他人の顔色をうかがおうとする姿勢だ。 「日常のささいな会話においても、『自分が話したいこと』ではなく『相手の求…

松原岩五郎の覚悟

明治27年におきた日清戦争は、近代日本における初めての対外戦争だった。新聞社はこぞって従軍記者を派遣、速報をしのぎあった。 戦争の是非を問うのがメディアの役割だが、販売部数を伸ばして経営規模を成長させて「マスメディア」とするのも、戦争である…

大雪の鳥取

昨夜から今日の昼すぎにかけて、また、大雪となった。 大みそかの深夜から元日にかけて、さらにつもる気配ある。

気象庁が教えてくれない大雪が降るパターン

大雪が降るのには、パターンがある。 まず、前日、抜けるような青空。布団を干せそうだが、外は湿気が多いので干してはいけません。 ついで、風がでます。さらに肌をさす冷たい風に急激に変わります。風の勢いがまして外の戸をゆるり出します。 夜。しんしん…

なんてこった

ある詩人の回顧展を、県立図書館でやった。則武三雄のことだ。 短兵急だったので、年譜のアチコチに間違いがある。その回顧展を、また、別のところでもやった。なんてこった。間違いを訂正するでもなく、そのままやってしまった。 最近の学芸員は一事が万事…

アロガント

女優の岸恵子さんが、こんなふうに話している。1993年1月15日「週刊朝日」 「日本って怖いわ、何が起こっても国民が怒らないでしょ。怒っても一過性で、あまりにもあきらめがよすぎる。それに排他的で、鎖国時代に戻りたがっているみたいに見えるわ。…

宮本輝さんが愛用する万年筆

チチッ、シェーン。華やかな店内の奥まった工房から、ロクロで万年筆の軸を挽(ひ)く音が聴こえてくる。ガラスで隔てられた畳一畳ほどが仕事場である。お客さんには見向きもせず、黙々と指を走らせる。 ペン先から軸までこなすオーダーメイドの万年筆職人の…

アシックス創業者鬼塚喜八郎の気概

鬼塚さんには、人との結びつきを大切にする人柄がにじんでいる。戦死した友人の遺言で養子入りし、旧姓「坂口」から「鬼塚」になったのも、もとをたどればそうした人柄からである。離れて半世紀以上がたつ故郷・鳥取の恩師や旧友たちのことを語り始めると止…

芸術家高木啓太郎

おだやかなまなざしが、ひきしまる。すべる竹筆。技法にとらわれないかっ達な筆致。泣いたり、笑ったり、怒ったり、喜んだりと、自在に描かれる墨彩は、慈眼にあふれている。かじかんだ身体を温めてくれるかのように…。 「折々の感情が出とればええ。理屈は…

鳥取 智頭町新田集落の冬

粉雪が舞っていた。三月上旬というのに、稜線に雪が残っていた。智頭町の新田集落である。 大型の除雪車が道路際にあった。 もう何年にもわたって、ぼくの心から消えずにいる集落である。古老からの話しが楽しみだ。 クルマを横道に停めて、てっぺんのパン屋…

子どもの聲がきこえないムラ

30年後、50年後の姿を描くことが難しい集落が多く存在する。 「過疎化」と「高齢化」というおなじみの言葉が今なおずっしりと集落にのしかかり、ますますその重みを増しつつある。 農村集落は地域の人々のたゆまぬ努力によって、農地、山林をはじめすべての…

むらが滅ぶ

四年前に、こう書いた。ムラが消滅するまでの道筋である。(1)はじめに 「人の空洞化」→「土地の空洞化」→「ムラの空洞化」→「ムラの消滅」 これを前から順に言い換えれば、「過疎化」→「耕作放棄(減反)」→「社会的空白地域化(集落機能の極小化)」→「…

ごまかし言葉

ごまかし言葉、というのがある。長いこと、新聞記者をしてきて、ふりかえる。列島の支配階級は、古来から民衆をだましてきた歴史がある。 秀吉までさかのぼる。太閤検地と刀狩り。刀狩りはは、武者奉公をやめさせ、百姓のゲリラをおさえるためだが、「武器を…