TBSドラマ「天皇の料理番」の著者、杉森久英さんの伝記小説を書く裏話を集めた本である。
「人間の鑑賞」。
大仰な題名である。
近衛文麿、東条英機、阿南惟幾、花森安治、野間宏、大宅壮一、梶山季之の”小伝”を読むと、ずいぶんと人間味がある人たちである。
「この社会は善悪入り乱れて、紛然雑然としたもの」であり、興味尽きない。
書き手としては、掘り尽くされている人物は敬遠する。
仕事としては、文献も資料がないほうがいい。自分で開拓するほうが、楽しみもおおい。
「伝記」。
興味本位で誇張したり歪曲してはいけないが、「恥部」を隠してはウソっぱちだらけの肖像となる。
あわせて、人間を冠にした本こそ、ウソっぱちである。