むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

鳥取地震と『震災編集者』

 ことしは、予期せぬ災難に遭った。

 鳥取地震である。東北には2度、うかがわさせてもらった。

 未曾有ーーこのことばの持つ力に、うなだれるしかなかった。

 そこでの惨状は、この眼に焼き付いている。

 だが、いざ、この身に地震に襲われると、弱い。

 ミシミシミシと10分近く、家が揺れる。一目散に家を出る。

 築55年もする家だから、倒壊するかなとの不安はあった。

 持ちこたえた。

 家は丈夫だったが、家人のこころがへし折れた。

 さらに、余震が追い打ちをかける。

 こころがつぶれかける。

 このまま、独りで生きることへの「自信」を遮断された。

 矢先、『震災編集者』(河出書房新社)を読んだ。

 著者の土方正志さんの名前は、ユージン・スミスを書かれたいたので、知っていた。

 いつも、カバンに入れて持ち歩いて、読んでいる。

 壮絶なる本づくりへの執念だ。同時に仲間とのつながりが描かれている。

 「記録」。

 新聞には載らない「伝言」。

 あらためて、気骨な本を編む者の姿にむきあっている。