むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

本のタイトルの大切さ。よくぞつけたり「腐る経済」

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 ベストセラーとなっている。田舎の本屋でも、まだ”一等地”においてある。2年前の9月に出ているから息の長い本である。

 ひとことで説明するのが難しい内容である。いくつもの要素が折り重なりあい、盛りだくさんのとても欲張りな本だ。

 3つの側面から、この本の面白さを伝える。

 1つ目は著者の成長物語。2つ目はパンのつくり手だからこそ語れるパンや「発酵」の話。そして3つ目がタイトルにもあるパン屋ならではの「経済」の話である。

 「人口減少の働き方」も加味している。

 人口が減る一方、慢性的な失業に苦しむ「ひと余り」状態。そういう時代に「労働効率のみを追い求めるより、十分に人手をかけて技を磨き、環境負荷を減らす働き方が、新たな価値を持つ」と持論を披瀝する。

 「正しく高く」仕入、手間暇かけてパンをつくる。そのすべての労働と、家賃や減価償却など諸経費を「正しく」価格に反映、パンを食べるひとに届けている。コストを正しく積算する。平均単価400円。

 なによりも「菌」の場づくりに手間をかけているそうだ。「天然菌」で発酵させている。

 手間をかければいいわけではない。過疎のまちで四六時中あけるのは、非効率。週3日は店を閉める。

 「人口が減っても、人手をかけた豊かな『商品』がそこかしこに溢れれば、楽しく心地よい場所になる」と、主人は確信する。