むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

大雪で傷つく過疎の村

 陽気がよくなった。過疎の農村をクルマで、まるっと3日間駆ける。残雪が残る。民家の軒先が、へし折れている。大雪の残骸だ。

 途中で、村人に聞き書きする。「大雪に痛めつけられたな。10日もソトに出れんかった」と。

 20年付き合いのある手漉き和紙職人が、廃業した。「76歳になるし、先行きも暗いんで辞めたよ。伝統工芸士で、国からも幾度となく表彰されている凄腕のひとだ。

 「こんな紙切れは、ナンも役にたたん」と吐き捨てる。

 村人は、ガマン強い。「いくら言うても、つっかえ棒にもならん」と。黙る。

 待ったなしで消滅する農村。そ知らぬふりの行政。田んぼ、山が荒れれば、町も荒廃する。

 もう町も、荒れている。