標高550メートル。棚田が一望できる”集落一”の高台に、パン屋さんはある。初めて訪れるひとは、誰もが「こんな辺ぴなことろに」と首をかしげる。
切り盛りするのは80歳の夫婦に、愛知県からUターンしてきた息子さん夫婦だ。金、土、日、月曜日の週4日が営業日だが、「家の都合で急に休む」ときもある。
扱うパンは天然酵母の食パンやコッペパンなどのほか、フキノトウ、ヨモギ、ショウガを練りこんだ菓子パンなどである。店内には、ジャズが流れる。週末には、県内外からの”ファン”が絶えない。行列ができるときもある。
どこにでもあるパン屋さんだが、なぜか人気がある。
2、3年ならわかるが、20年も人気が落ちない。ホームページもブログなどSNSはない。宣伝もしない。頼りクチコミだけである。
マイナス要因ばかりのパン屋さんに、なぜ足繁く行くのか。老夫婦の笑顔と会話する歓びである。