むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

歩く

 作家は、身辺のありとあらゆることを、小説にする。すごいな、と感服する。

 「歩く」ことだけでも、仕立てる。一歳くらいで歩きはじめる、ことから解きほぐし、ランドセルを背負ったピカピカの一年生。一人で歩いて校門をくぐる。
  
 中学ではクラブ活動で、走る、蹴る、投げる。高校になると、一人前になろうと背伸びをする。大学では、就活で歩く、歩く。

 就職すると、また、歩く。ぼくが人生でもっとも歩いたのは、仕事についてからだ。「足で稼げ」と叱咤された。いつのまにか、こんなとしになってからも、義務で歩いている。

 結局、歩くことは、独りでしかできない。