むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

すーっと、いなくなる

 気温5度。朝ごはんをすませ、散歩していた。遠方のほうで、見なれない婦人が農作業している。近づいて「おはようございます。朝から、精が出ますね」と声をかけると、「義父がなくなり、余暇ができたもので」と。

 そっか、先日亡くなったところのお嫁さんだった。集落のひとの話では、72歳で再婚したらしい。熟年結婚か。

 ぼそっと言った。「人って、すーっと、いなくなるんですね、存在しなくなるんですね」と。肺炎をこじらせ、10日も高熱が続いたようだ。懸命の介護だった。ひたいには、汗がにじんでいた。

 「来春、玉ねぎができたらあげるよ」。農作業は手慣れたようだ。