むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

山村振興から、山村の価値を重視へ。豊田市が最先端モデルを制定。

 愛知県豊田市が、1月1日から「山村の価値」を規定した全国の自治体では最先端レベルの「山村条例」を施行させた。4月1日ではなく、元旦からスタートである。

 「山村条例」の正式名称は、「豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例」である。

 全国にあるこうした条例の多くは、「中山間地域」という馴染みのない文言であらわしているが、やさしく「山村」でまとめている。ソフトランディングである。

 条例全文を豊田市のHPから引用する。

  私たちのまちは、矢作川流域でつながる都市と山村が共存する多様な魅力にあふれるまちです。

 山 村 は 、 豊 か な 自 然 を 有 し て お り 、 私 た ち は 自 然 に 生 か さ れ る と と も に 、脈々と継承されてきた自然と調和した人の営みなど、その様々な価値を暮らしに生かしてきました。

 戦後の高度経済成長期を経て、山村から都市への人や物の集中が進みましたが、近年では環境意識の高まり、デジタル化など社会環境変化により、自然豊かな山村への関心が高まるなど山村に係る多様な価値観及び生活様式が生まれています。

 例えば、森林や田畑を守ること、生業(なりわい)を創ることや継承すること、祭りや文化を通して地域とつながること、自然の中で育てをすること、週末に農園や森に通うこと、米や野菜などの地域の農産物を使うこと、先進技術を融合させた暮らしをすることなどが挙げられます。

 私たちは、山村の価値を守り、生かし、分かち合い、その価値を次の世代につなぐため、山村に愛着と誇りを持ちながら日々の暮らし楽しむとともに、自然と人、暮らしと事業者等、都市と山村がつながり、支え合うことにより、共働の取組として環境、経済及び社会が循環する持続的なまちづくりを推進することを決意し、ここに豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例を制定します。

 この中味の言わんとしていることは、山村「再生」あるいは「振興」といった経済活動を重視したものではなく、支え合いといった福祉活動から接近することによって、山村再生論が陥るワナともいえる「再生可能な地域のみに資源が配分される」危険性を克服できる可能性を有している。