むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

朝のひととき、自分と向き合いたい

 季節のめぐり、一月のめぐり、一日のめぐり。その一刻、一刻に多彩な彩がある。音があり、匂いがあり、感じがある。

 黙って五感に聴き入って澄ましながら、朝を迎える。

 「小さな庵を心のよりどころに、世の天災に思いを巡らせた鴨長明のように、一日に五分でいいから沈思黙考する時間を持ってほしい。この危機に立ち向かうには、一人ひとりが内面と対峙するところから始めるしかない。そう思っています」

 新聞の文化面に載っていた染織家・志村ふくみさんの言葉である。慈愛にあふれている。いつのころからか志村さんの本は、いつもそばにおいている。心におとす文章には赤い線をひく。もうすこし大切な詞は和紙の手製本に書き留める。

 80歳をすぎてドストエフスキーを読みこんだエッセーを発行。またリルケの難解な作品を読解した本もだした。「10年以上かかって、やっと少しリルケが分かった」。

 持続力は、長距離ランナーのようだ。