むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

見わたせば、おばあちゃんばかり

 高齢者が一人なくなると、図書館が一館つぶれるほどに匹敵する。それほどの知の集積庫である。ぼくの住む集落では、今年だけで3人を見送った。

 きのうも、盛大な葬儀があった。74歳の男性だった。2週間まえに、挨拶をしたばかり。早かった。夏すぎには、92歳の男性。県議会議員の参謀だった。春前は、82歳の男性。農作業ひと筋。いずれも、男性である。いつも世話になる野菜づくりの名人、91歳は「この次は、わしだからな」が口ぐせである。4年も聴いている。

 おばあちゃん達は、達者だ。背中はエビのようになっているが、よくしゃべる。元気のもとは「悪口であろうが、自慢であろうが、遠慮なく大声でしゃくる」ことだ。

 見わたせば、独り暮らしのおばあちゃんが目立つ。「早う、迎えがこんかな」と顔を合わせれば、つぶやく。気は若い。

 高齢のむらは、おばあちゃんの「天国」といえそうだ。