むらの幸福論

暮らしのちいさなところに眼をむける。

老々介護で倖せな暮らし

 「寒いだろう。あったかいカンコーヒーを飲まないか?」

 ぼくの集落には、毎週水曜日の午後、移動販売車がくる。いつも一番のりは、こう声をかけてくれる82歳のおばあちゃんだ。小学校を終えると、「丁稚」にはいる。自分のいたみを体得しているひとは、支えてくれるひとには、親切だ。

 おばあちゃんは、こがらなうえ、足腰がわるい。手押しくるまでやってくる。販売車においてある商品はたかくて見えずらい。「あれとって」「これはないか」と指図してくれるのを、ぼくがとってあげるのが習慣になっている。

 「いつも手伝ってくれて、スマンな」

 手押しくるまをひいて帰る。

 老々介護でのふたり暮らしで、「ケンカしながら」倖せだ。