新聞記者稼業から離れて10年たつ。歴史の陰にいるひとを発掘する作業に手を染めている。取材して、高い本を買ってと、準備段階でお金がかかる。しろうとには、おおきな出費である。藤沢周平さんも、歴史小説を書くとき、そうした作業に惜しむなく時間とお…
中国地方の最高峰、大山(だいせん)の北側千百六十ヘクタールの高原にひろがる「香取村」。香川県の「香」と鳥取県の「取」をとった、香川県出身者たちによる開拓村である。 日本戦後史のなかでも成功した貴重な開拓団といわれる「香取開拓農業協同組合」を…
日本の暗部をさぐるルポ 「底辺生活」をあぶりだすルポは、いまでは珍しいないだろう。 しかし、明治30年ごろに、その出自はあった。松原岩五郎がかかんに挑んでいる。 貧民の子弟が環境の悪いところから悪の道に転落していく因果関係を追求する。 <親は…
詩人の長田弘さんは「留保の言葉」にこだわった。 「言葉を走らせずに、たちどまるのが、留保である」という。 平凡の価値は、失ってわかることを、コロナ社会で学んだ。それならば、今は、何をなすべきかではなく、何をなすべきではないかを言いうる、言葉…
] 記録的な豪雪となった2017年には、これぐらい降りました。でも、今季、気象庁がいう十数年に一度は、サッパリ降らない。 ライフラインにも支障はない。 気象庁の予報は、はずれてくれるので嬉しい。
今季ぐらい天気予報があたらない年はない。気象庁は、どうやって推し測っているのだろう。気象予報士の説明も、単一で信憑性がない。どの予報士も知恵がない。工夫が欲しい。
鳥取県という自治体は、なにかにつけて「全国初」というマウントを取りたがる。おかしな風潮だ。「初」がどうなんだろう。ようやっているから賛辞してもらいたい、のだろうか。 また、「全国初」らしい。 2022年度から公立小学校の全学年で順次「30人…
愛知県豊田市が、1月1日から「山村の価値」を規定した全国の自治体では最先端レベルの「山村条例」を施行させた。4月1日ではなく、元旦からスタートである。 「山村条例」の正式名称は、「豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例」…
一年に数回、ぼくがだした本のことで、遠方から問い合わせがある。関心をもってくれるひとがいるんだ。大正期に大阪朝日新聞懸賞小説で入選し、将来を嘱望された女流作家のことである。 田中古代子(1897-1935)で、非命にたおれた38年だった。た…
「悪口は、言わない、聞かない、関わらない」「『嫌われない話し方』は、『好かれる話し方』以上に重要」との提言からわかるのは、とにかく他人の顔色をうかがおうとする姿勢だ。 「日常のささいな会話においても、『自分が話したいこと』ではなく『相手の求…
明治27年におきた日清戦争は、近代日本における初めての対外戦争だった。新聞社はこぞって従軍記者を派遣、速報をしのぎあった。 戦争の是非を問うのがメディアの役割だが、販売部数を伸ばして経営規模を成長させて「マスメディア」とするのも、戦争である…
昨夜から今日の昼すぎにかけて、また、大雪となった。 大みそかの深夜から元日にかけて、さらにつもる気配ある。
大雪が降るのには、パターンがある。 まず、前日、抜けるような青空。布団を干せそうだが、外は湿気が多いので干してはいけません。 ついで、風がでます。さらに肌をさす冷たい風に急激に変わります。風の勢いがまして外の戸をゆるり出します。 夜。しんしん…
ある詩人の回顧展を、県立図書館でやった。則武三雄のことだ。 短兵急だったので、年譜のアチコチに間違いがある。その回顧展を、また、別のところでもやった。なんてこった。間違いを訂正するでもなく、そのままやってしまった。 最近の学芸員は一事が万事…
女優の岸恵子さんが、こんなふうに話している。1993年1月15日「週刊朝日」 「日本って怖いわ、何が起こっても国民が怒らないでしょ。怒っても一過性で、あまりにもあきらめがよすぎる。それに排他的で、鎖国時代に戻りたがっているみたいに見えるわ。…
チチッ、シェーン。華やかな店内の奥まった工房から、ロクロで万年筆の軸を挽(ひ)く音が聴こえてくる。ガラスで隔てられた畳一畳ほどが仕事場である。お客さんには見向きもせず、黙々と指を走らせる。 ペン先から軸までこなすオーダーメイドの万年筆職人の…
鬼塚さんには、人との結びつきを大切にする人柄がにじんでいる。戦死した友人の遺言で養子入りし、旧姓「坂口」から「鬼塚」になったのも、もとをたどればそうした人柄からである。離れて半世紀以上がたつ故郷・鳥取の恩師や旧友たちのことを語り始めると止…
おだやかなまなざしが、ひきしまる。すべる竹筆。技法にとらわれないかっ達な筆致。泣いたり、笑ったり、怒ったり、喜んだりと、自在に描かれる墨彩は、慈眼にあふれている。かじかんだ身体を温めてくれるかのように…。 「折々の感情が出とればええ。理屈は…
粉雪が舞っていた。三月上旬というのに、稜線に雪が残っていた。智頭町の新田集落である。 大型の除雪車が道路際にあった。 もう何年にもわたって、ぼくの心から消えずにいる集落である。古老からの話しが楽しみだ。 クルマを横道に停めて、てっぺんのパン屋…
30年後、50年後の姿を描くことが難しい集落が多く存在する。 「過疎化」と「高齢化」というおなじみの言葉が今なおずっしりと集落にのしかかり、ますますその重みを増しつつある。 農村集落は地域の人々のたゆまぬ努力によって、農地、山林をはじめすべての…
四年前に、こう書いた。ムラが消滅するまでの道筋である。(1)はじめに 「人の空洞化」→「土地の空洞化」→「ムラの空洞化」→「ムラの消滅」 これを前から順に言い換えれば、「過疎化」→「耕作放棄(減反)」→「社会的空白地域化(集落機能の極小化)」→「…
ごまかし言葉、というのがある。長いこと、新聞記者をしてきて、ふりかえる。列島の支配階級は、古来から民衆をだましてきた歴史がある。 秀吉までさかのぼる。太閤検地と刀狩り。刀狩りはは、武者奉公をやめさせ、百姓のゲリラをおさえるためだが、「武器を…
松葉ガニ漁の同乗取材をしたことがある。4日間だけだったが、乗船してまるっと1日で、胃袋のなかのものをすべて吐き出すほど過酷だった。 その船には、その後、記録者を同乗させていない。取材するほうも、取材させるほうも、リスクがともなうためである。…
「頑張れという励ましは、時に脅迫のようにも聞こえる。上のほうから、地方創生だの一億総活躍社会だのと言われるのは息苦しい。そもそも何のため、誰のための頑張りであり経済成長なのか」ーーこのように、哲学者の内山節さんは切り出す。 競争社会から一歩…
新しい資本主義を検討するメンバーをみて、ガッカリした。バランスが好きな首相らしい選択ですね。 会議ではデジタルやグリーン、人工知能(AI)、量子、バイオ、宇宙など「日本経済を牽引(けんいん)する成長分野への投資などがテーマとなる」ようだ。農…
袋小路にはいった労働環境。哲学者として、体験を踏まえながら鋭い問題提起をされる内山節さんは、これからの社会は「職人の時代へ伝統回帰する」と説く。 企業も「職人の倫理で働くことを許す組織は生き残る」と話す。フリーター、ニート、就労意識など幅広…
岸田首相がしきり言う新しい資本主義は、合本資本主義のことなのだろうか? 渋沢は、合本主義と言う考え方をとなえていた。渋沢の書いたものを読むと、「合本主義とは、公益を追及するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め事業を推進さ…
よくぞ、断わってくれてありがとう。 5月21日、22日に行われる鳥取県での東京オリンピック聖火リレーで、著名人ランナーとして走る予定だったタレントのイモトアヤコさんと、バルセロナオリンピック男子マラソン銀メダルの森下広一さんの2人が、走行を…
無策がまたも。大阪府の吉村知事の迷走がとまらない。 感染拡大を食い止めるため大阪府内の小・中学校と高校に対して「クラブ活動の自粛」を、大学に対して「対面授業の中止とリモート授業の実施」を求めるようです。 大人のつけを、また、子どもにまわす。
ついに、来たかーー。電通グループが、本社ビルを売却する方向のようだ。 売却額は数千億円規模になるとみられる。思ったよりも、安いな。 新型コロナの感染拡大を受け、社員のリモートワークを進めており、本社ビルに勤務する約9千人の出社率は最近では2割…